「追加防水検査のススメ」の記事でもご紹介しましたが、保険事故の約9割が雨漏れ事故。
やはり雨漏れ対策は住宅施工において最大のテーマです。
事故内訳は屋根が約22%、外壁が約72%。さらに外壁のうち外壁面は31%、外壁の窓廻りが25%、バルコニーが16%の順番となります。
これらの雨漏れ事故を防ぐにはどうしたらよいでしょうか?
目次
バルコニーまわりの雨漏れ事故の要因とは?
保険事故として認定された雨漏れ事故のうち、特にバルコニー・ベランダに多発している要因としては
◎防水層の施工不良
◎ドレン廻りの施工不良
◎手すり笠木まわりの施工不良
が挙げられます。
今回は、“バルコニーまわりの防水施工のポイントと注意点”についてご説明いたします。
バルコニー床面工事の注意点とチェックポイント
防水層の施工不良と対策
1:床面の勾配について
【防水層 ポイント1】
床は、1/50以上の勾配を設ける。
ただし、防水材製造者の施工基準において表面排水を行いやすい措置を施すなど、当該基準が雨水の浸入を防止するために適切であると認められる場合は当該基準によることができる。
まずチェックポイントの1つめは、床面の勾配が適切であるかどうかです。
床の勾配は1/50以上必要です。これ以下であれば雨水が滞留することもあり、防水層の劣化が早まるなどして、漏水の一因となることがあります。
また勾配が逆になっている(逆勾配)と吹き込んだ雨水が室内側に集まってきてしまいます。
ちなみに勾配が正しくとれていたとしても、床面に凸凹があると雨水が溜まりやすい状態になりますので、注意が必要です。
2:壁面の防水層の立上り高さ・サッシ枠下側の壁面高さについて
【防水層 ポイント2】
壁面との取り合い部分(手すり壁又はパラペット(以下「手すり壁等」という)との取り合い部分を含む)の防水層は、開口部の下端で120mm以上、それ以外の部分で250mm以上立ち上げ、その端部にシーリング材又は防水テープを施すこと。
次に大事なチェックポイントは、壁面の防水層の立上りの高さです。
腰壁(バルコニーの外側の壁)の立上り部分は、250mm以上の高さで防水層が施工されているかどうか、また、サッシ枠の下側の壁については、120mm以上の高さがあるかどうかです。
このサッシ枠の下側の壁については、サッシ枠との境の施工を丁寧にしていないとそこから雨水が浸入して雨漏りになってしまう事例がよくあるので、特に注意したいところです。
なお、ここでの「250㎜」および「120㎜」とは、見えがかり部分を指すものではなく、防水層自体の高さのこと。
したがって防水先施工の場合は、
サッシ下枠(フィン)の裏側に立ち上がっている防水層を含めた高さとします。
スリットやアルミ手すりの場合の施工方法について
最近の住宅では、通気や眺望・デザイン性を重視したスリットを入れた手すり壁やアルミ手すりの物件が多く見られますが、この場合でも“防水層の立上り高さは250㎜以上”必要です。
形状上やむを得ず、手すり壁やスリット部分において防水層の立上り高さが250mm未満となる場合は
1:バルコニー防水材をパラペット天端まで巻き上げ外壁防水紙と密着させる
2:三面交点となる部分にピンホールを防ぐため伸縮性のある防水テープを施す
などの防水・止水措置がわかる施工図面等を事前に提出いただき、ハウスジーメンが設計施工基準と同等と判断した場合、施工が可能になります。
排水溝・ドレン廻りの施工不良と対策
【排水溝 ポイント1】
排水溝は勾配を確保し、排水ドレン取付部は防水層の補強措置および取合部の止水措置を施す。
排水溝は雨水が排水溝の方へと流れるように計画されているかを確認します。
排水勾配に指定はありませんが確実に排水されるよう、注意が必要です。
また防水層の塗布状況やシーリング材の充填状況も確認項目になります。取合部まで止水措置がなされているかが確認ポイントになります。
手すり・笠木廻りの施工不良と対策
1:手すり壁等 防水紙種類・防水措置について
【手すり壁等のポイント】
(1)防水紙の種類
JIS A 6005(アスファルトルーフィングフェルト)に適合するアスファルトフェルト430、JIS A 6111(透湿防水シート)に適合する透湿防水シート又はこれらと同等以上の防水性能を有するものを使用
(2)防水紙は、手すり壁等の下端から張り上げ、手すり壁等の上端部で重ね合わせる。
(3)上端部は、金属製の笠木を設置するなど適切な防水措置を施すこと。
(4)上端部に笠木等を釘やビスを用いて固定する場合は、釘又はビス等が防水層を貫通 する部分にあらかじめ防水テープやシーリングなどを用い止水措置を施すこと。
(5)外壁を通気構法とした場合のパラペットは、外壁の通気を妨げない形状とする。
手すりの上端部は、寒暖による温度変化、日射、凍結等、気候による影響を強く受ける為、ひび割れが発生することがあります。
また、豪雨時、下から吹き上げてくる雨水などが継ぎ目から浸水すると、笠木は水平に近いため内部に入り込んだ雨水はなかなか排出されません。
適切に施工しないと下地木材が腐朽し、壁伝いに雨水が流れて室内に漏れ出してしまいます。
笠木の設置方法や防水材料の施工等、雨水の浸入を防止するために有効な措置を講じる必要があります(「防水材料」には防水モルタルや撥水材は含まず)。
2:防水紙の種類と使い分け
防水紙は外壁の仕様により種類が異なります。施工方法を間違えると通気構法にもかかわらず給気・排気が機能せず腐食に至ることもあります。施工前の確認が必要です。
間違いやすいシートの種類と違い
■ アスファルトフェルト
→水と湿気(水蒸気)を通さない。・・・・外部に使用
※湿式工法施工時に使用します。
■ 透湿防水シート(透湿シート、防水シートはともに透湿防水シートのこと)
→水は通さないが湿気(水蒸気)は通す。・・・・外部に使用
※主に乾式(通気構法)仕上時に使用します。
類似品で下記防水紙がありますので注意してください
■ 防湿気密シート
→空気と湿気(水蒸気)を通さない。・・・・室内に使用
※主にぺーバーバリア仕様として断熱材と石膏ボードの間に張り付けます。
3:防水紙の納まりについて
バルコニーの手すり壁と笠木・手すりの取り付け部分は、防水テープと透湿防水シート等をしっかりと組み合わせて張ることで、雨水が入り込まないようにします。
笠木部分は通気を確保し、手すり壁と笠木の間に雨水が入っても速やかに外部に出て行くようにするため、シーリング材などで塞ぐことはしません。
そのため、浸入してしまった雨水が内部に浸み込まないように確実に防水する必要があります。
4:手すり壁と外壁の取合い部の納まり
バルコニーの手すり壁は天端に雨水が直接吹き付ける危険部位です。
ピンホールが出来やすい三面交点も存在するので、入念な防水処理が必要になります。
三面交点となる手すり壁と外壁の取り合い部を万全に仕上げるには、手すり壁の天端に透湿防水シートを壁内外から二重に掛けてその上を鞍掛シートで覆い、三面交点を弾性系防水テープで押さえ込みます。
さらに役物で覆って両面ブチル防水テープで厳重に留め付けます。
笠木天端の透湿防水シートの継ぎ目も忘れずにテープを貼って連続性を確保しましょう。
手すりと壁の取合部の施工の注意点
① 防水テープにピンホールを作らない。
② 透湿防水シートは連続性を確保。(防水テープで連続性を確保)
5:笠木天端の透湿防水シートの納まり
笠木天端部の施工の注意点
① 三面交点ポイントの確認 → ピンホールの有無の確認
② 透湿防水シートの重ね合せ寸法の確認→90㎜以上確保
③ 鞍掛シートの確認→ 有無の確認
(透湿防水シートが反対側の壁まで巻き込んである場合は不要)
さて、今回はバルコニーまわりで雨漏れ事故が起こりやすい部位の防水施工のポイントと注意点についてお伝えしました。外壁の仕様によって施工内容は変わりますが、雨漏れ事故を防ぐための基本的な考え方はご理解いただいたかと思います。
今日のまとめです。
次回は外壁の防水施工のポイントと注意点についてご説明いたします。
事故が起こる前にしっかり備える『追加防水検査』についてはこちら
→『 事故が起こる前に備えよう 追加防水検査のススメ 』