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長期優良住宅の今後

長期優良住宅の今後

令和元年6月に、長期優良住宅の普及の促進に関する法律の施行から10年が経過します。
奇しくも筆者がハウスジーメンに入社したのも同じ10年前の6月でした。
長期優良住宅のスタート期は説明会を実施するなど、今も同様にこの制度に関係する事が多く、個人的には縁が深いと思っています。

そんなわけで今回は「長期優良住宅の今後」についてお話ししていきたいと思います。

最初に

この法律の目的は、従来の「つくっては壊す」スクラップ&ビルド型の社会から、「いいものを作って、きちんと手入れをして長く大切に使う」ストック活用型の社会への転換として、長期にわたり良好な状態で使用するための措置が、その構造および設備に講じられた優良な住宅(=長期優良住宅)を普及させることです。
長期優良住宅の建築および維持保全の計画を作成して所管行政庁に申請することで、基準に適合する場合は認定を受けることができます。

長期優良住宅の認定を受けた住宅には様々なメリットが用意されており、補助金や住宅ローンの金利引き下げ、税の特例や地震保険料の割引等を受けることができます。

制度スタートから平成30年3月末(2018年度)までの約9年間で全国の累計認定実績は915,194戸になり、現在は年間10万戸程度で推移しています。

戸建住宅では住宅着工全体の約25%、4戸に1戸は長期優良住宅となっております。

なお、共同住宅は全体の1%未満と低い状況です。

この数字を多いとみるか少ないとみるかで意見は分かれるところですが、実際は年間500戸を超える住宅事業者(ハウスメーカーやビルダー)の取り組みで牽引しているだけにすぎず、住宅を供給している2万社を超える多くの建設業者が広く取り組んでいるとは言い難いのではないでしょうか。
ちなみに、当社での長期優良住宅の技術的審査適合証の発行累計は本年3月末現在では約3万戸となりますが、全体の3%にも満たない件数です。(どうでも良いですね)
そして、技術的審査を行っている評価機関は全国で120機関程あります。

長期優良住宅とは

長期優良住宅とは、大きく分けて4つの措置が講じられている住宅を指します。

  1. 長期に使用するための構造及び設備を有していること
  2. 居住環境等への配慮を行っていること
  3. 一定面積以上の住戸面積を有していること
  4. 維持保全の期間、方法を定めていること

上記のうち 1. は建物に関する技術的な基準となり、住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく住宅性能表示制度の基準(以下「評価方法基準」といいます。)を準用しており、耐震性、省エネルギー性、維持管理・更新の容易性、劣化対策がメインとなります。

また、平成28年4月より、新築住宅だけでなく増改築を行う場合にも長期優良住宅の認定を取得することが出来るようになりました。

本記事を読まれている方はプロの住宅事業者だと思いますので基準の詳細は割愛しますが、詳しく知りたい方は下記のホームページを参照ください。

あり方検討会

業界紙等で紹介されていますので、ご存知の方も多いと思いますが10年が経過することを見据え、長期優良住宅制度に対する評価や課題を整理し、長期優良住宅のさらなる普及促進に向けた取組の方向性について検討することを目的に「長期優良住宅制度のあり方に関する検討会」が昨年の11月から下記の3つの大きなテーマで実施されています。

  1. 認定の枠組みについて
  2. 制度のさらなる普及促進のためのインセンティブのあり方
  3. 事務手続きの合理化

その中の資料で「長期優良住宅制度の評価と課題」と称して国土交通省が行ったアンケート結果から課題が抽出されています。このアンケートでは実際に長期優良住宅を取得した消費者の約80%が「高い性能」や「税の特例措置」、「第三者認証」に魅力や満足を感じているという結果が出ています。

課題としては供給者側のアンケート結果で、認定基準に関して

  • 劣化対策
    ハウスメーカー、マンション供給者の半数以上が「緩和すべき」と回答。
  • 耐震性
    ハウスメーカー、工務店では「現状のままでよい」が最も多いが、マンション供給者では「緩和すべき」が最も多い。
  • 維持管理・更新の容易性
    ハウスメーカー、マンション供給者では「緩和すべき」が最も多い。工務店では「現状のままで よい」が最も多い。
  • 省エネルギー性
    いずれも「現状のままでよい」が最も多いが、約2割の工務店が「強化すべき」と回答。
  • 住戸面積
    ハウスメーカー、マンション供給者の8割以上、工務店の約3割が「緩和すべき」と回答。

納得の結果ですね。

共同住宅では劣化対策、耐震性、維持管理・更新の容易性、住戸面積はハードルが高いので緩和すべきとの回答が多く、実際の認定実績が少ないのも頷けます。

工務店の約2割が省エネルギー性を強化すべきとしている点は意外でした。
あと面積が小さいと認定取得ができないので住戸面積の緩和は賛成します。

認定取得の取組を始める際に障壁となったもの、もしくは、現在も障壁になっているものとして、「認定基準を満たすための設計図書の作成方法」「手続き・申請の方法」を挙げる事業者数が25% 以上であるなどの手続きに関する要望が多く、改善の要望等では、「申請時期の柔軟化」、「申請から認定交付までの期間の短縮」を挙げた工務店がいずれも約6割を占め、スケジュールに関する改善要望が強い結果となりました。

直近3月27日に開催された第5回目のあり方検討会では、上記の課題から共同住宅の認定促進に関する内容と住宅性能表示制度と長期優良住宅の一体的な運用について議論されていますのでご紹介します。

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