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長期優良住宅の今後

共同住宅の認定促進について

共同住宅での認定取得が進まない理由として以下の点があげられています。

1. 認定基準について

劣化対策、耐震性、可変性、維持管理・更新容易性の基準に適合させるための追加コスト等が大きい。
例えばRC造の劣化対策ではかぶり厚さをプラス10mmとするか水セメント比を5%低減させるなど、可変性では躯体天井高を2,650mm以上としているので高さ制限や斜線制限との関係で基準を満たそうとすると、1フロア減るなど現実的では無い状況。

2. 認定の枠組みについて

① 認定取得には各戸単位での申請が必要である一方、認定基準には棟全体での評価を必要とするもの(劣化対策、耐震性 等)があり合理的ではない

② マンションを長寿命化する上で、共用部分(躯体)の維持保全の重要性が高いことを考えれば、維持保全に係るソフト対策をもっと評価して良いのではないか
例えばクラックを早期に発見するための点検・補修の内容が織り込まれた長期修繕計画や復旧・更新工事が大規模なものとなる事を見込んだ修繕積立金額の設定など

3. 認定取得のメリットについて

① 現行のインセンティブが追加コストに見合うものとなっていない

② 認定取得後11年目以降の支援・優遇措置がない
(適切な維持保全を継続することに対するインセンティブがない)

③ 認定を取得しても、建物価値に反映されない

住宅性能表示制度との一体的な運用について

こちらは申請に関連する要望事項としていくつかあげられています。

  1. 性能表示制度との一体的な運用は、事業者から要望の大きい申請から認定までの期間短縮の観点からも重要で、技術的審査の審査主体(性能評価機関)と審査結果に対する責任主体(所管行政庁)を同一にしてほしい。
    例えば、住宅性能表示制度の中で「長期優良住宅相当」と評価できるようにすることはできないかなど
  2. 長期優良住宅における現場検査をどのように位置づけ、どのように合理的に実施できるかについて検討が必要。
  3. 住宅性能表示制度の紛争処理体制が長期優良住宅制度においても整備されることが望ましい。
  4. 着工後においても申請可としてほしい。

性能表示制度との一体的な運用はとても合理的ですね。平成27年4月に性能表示制度の基準は必須と選択項目が大きく変わり、必須項目は長期優良住宅と概ね一致しております。
この時点で一体的な運用へ向けた布石だったと考えます。
法律は別で出来ておりますが、住宅性能表示制度の評価基準を利用している関係から性能表示に長期優良住宅をインクルードしてしまえば現場検査も建設性能評価で賄うという形になると考えます。
そうなると上記の2. 3. は解決します。

ひとつ気になるのは、申請から認定までの期間短縮の部分で性能評価機関と所管行政庁の審査主体と責任主体の同一化の部分です。

現状でも長期使用構造等に関する基準は技術的審査を行っている性能評価機関が概ね担っていると思いますが、それ以外の住宅規模や居住環境の維持及び向上への配慮、維持保全計画等はやはり所管行政庁が審査する形しか考えられませんので、2段階審査となるのは避けられないかと・・

この結果によっては我々性能評価機関もどういう位置づけになるか興味があるところです。

最後に

今回ご紹介した内容のように共同住宅で長期優良住宅を取得し易くする、性能表示制度と一体とする合理化はとても賛成できるので是非実現してもらいたい内容です。
タイトルで長期優良住宅の今後としましたが、10年を迎えるにあたり色々な検討がされていますので今後どうなるかは未だ解りません。

戸建住宅の25%という状況もここ数年変化しておらず、当初から取り組んで継続している事業者と今もあまり必要性を感じていない事業者にニ極化しているのでは無いかと感じています。
現に各評価機関の審査件数もほぼ毎年変わらない形で推移しています。
実際のところ全棟対応している、お施主様が希望すれば対応する、予算が合わないから全く対応しないと様々な事業者が存在しており、どれが正解かは解りません。

個人的には住宅に必要不可欠な基本スペックとして耐震性と省エネルギー性があると考えていますので、本制度を活用するのも悪くないと思っています。
実際に住宅を供給している皆様だからこそ、その先にいる住宅取得者のことを考えて自社の取組にどうこの制度を生かしていくか改めて検討してもらえれば幸いです。

〔 筆者:ハウスジーメン 技術部長 道下佳紀 〕

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