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四号特例見直しって何?

四号特例見直しって何?


建築物省エネ法や建築基準法などを改正する脱炭素関連の法律が2022年6月17日に公布されました。その中で2025年度中の施行を予定しているものに、全ての建築物の省エネ基準適合義務化四号特例の範囲縮小があります。
現在、四号特例として建築確認申請時に審査が省略されている木造2階建て以下、延べ面積500㎡以下などの条件を満たす戸建住宅を改正後は木造平屋建て、延べ面積200㎡以下に範囲を縮小するという内容です。

本記事をご覧になっている建築士以外の方は、そもそも四号特例って何?という方もいらっしゃると思いましたので簡単に解説していきたいと思います。

▼もっと詳しく知りたい方は法律の新旧対照表などもご確認ください。
(第6条:P.69~71、第6条の4:P.72~73、第20条:P.75~76)

「四号特例」とは

建築基準法の第6条で建築する際の申請及び確認(建築確認申請)について建築物を一号から四号に分類しているもので、法第20条において、四号建築物は簡易的な構造安全性確認である「仕様規定」で良いとされており、法第6条の4(建築物の確認の特例)にて、建築士が設計している場合は、確認申請時の審査が省略されています。

これがいわゆる「四号特例」です。

流石に少なくなりましたが、この四号特例で確認申請時に構造関連図書の審査が省略されているため、構造の検討自体を行わない建築士や事業者がまだ存在しています・・・

ちなみに仕様規定とは、建築基準法施行令第37条から第49条までに規定されている11項目の構造や耐久性に関する基準のことで、「壁量計算」「壁配置のバランス(四分割)」「柱頭柱脚の接合(N値計算)」という3つの簡易な計算方法となります。

計算方法など詳しくは過去の記事をご確認ください。

少し歴史の勉強を

建築基準法は昭和25年に制定され、昭和34年に壁量基準を強化していますが、昭和56年(1981年)に新耐震基準と呼ばれる法改正で耐震性能が強化されました。
木造建築物は、現在の壁量計算(令46条)となりました。この3年後の昭和59年に四号特例は始まっています。
その後、平成7年の阪神淡路大震災の被害から、平成12年(2000年)に法改正が行われ、壁量計算に加え壁配置のバランス(四分割)、耐力壁両端の柱の柱頭柱脚の接合方法(N値計算)などが追加されました。
しかし、平成17年に耐震偽装問題が発覚、四号建築物の耐震状況調査も行われ、耐震性能の不足している木造住宅が多数発覚しました。
その後、四号特例廃止が話題となりましたが、平成19年の確認申請の厳格化が行われた後、四号特例の廃止はずっと見送りされておりました。

なお、平成12年(2000年)の法改正時に「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」が出来ており、住宅性能表示制度瑕疵担保責任が登場しています。
耐震偽装問題では瑕疵担保責任を果たすことができない事業者がいたため、平成21年(2009年)に「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」が施行され、事業者が瑕疵担保責任を果たすための資力確保を講じる方法として「住宅瑕疵保険」ができました。

瑕疵担保責任について、詳しくは過去の記事をご確認ください。

「四号特例」の見直し

さて、本題に戻して「四号特例」の縮小、見直しとはどういうことかというと、冒頭の建築基準法の改正法案で、第6条の条文から「四号」が消えて一号から三号までになっていました。法第6条の4(建築物の確認の特例)は新三号が対象となります。
二号にある3階建て以上の木造を対象とする項目を無くし、三号の木造以外に木造も含める形とし、それ以外を新三号にするというものです。

わかり難いので表をご確認ください。

先にも触れましたが、建築基準法の構造耐力は法第20条で構造安全性確認方法が定められており、法第6条と連動しています。
木造建築物は、現在の基準法では法第6条第1項の二号建築物(最高高さ13m超または、最高軒高9m超または、3階建て以上または、延床面積500㎡超)か、四号建築物(二号建築物以下の高さと面積)で分類されていますが、法第20条で見ると二号建築物は許容応力度計算などが必要で四号建築物は仕様規定(確認の特例)となっております。

では、改正法でどうなるかというと、法第6条第1項の二号建築物(最高高さ16m超または、2階建て以上または、延床面積200㎡超)か、三号建築物(二号建築物以下の高さと面積)に分類されます。

ここで最高高さ13mから16mに緩和され、軒高9mの制限は無くなっております。
法第20条で見ると階数と面積で異なりますが、二号建築物は許容応力度計算と仕様規定にわかれ、三号建築物は仕様規定となります。

改正後に建築確認の特例が使えるのは、三号に分類される最高高さ16m以下かつ、平屋建てかつ、延床面積200㎡以下のみということです。
改正後の二号でも最高高さ16m以下かつ、地階を除く2階建て以下かつ、延床面積300㎡以下の場合は仕様規定が使えますが、建築確認の特例は使えません。
今まで500㎡以上で必要だった許容応力度計算は300㎡以上となっていますのでご注意ください。

まとめ

簡単に言うと、省エネ基準の適合義務化にあたり、四号特例を残したままだと確認申請で省エネは審査するが、構造は審査しないということになるのを避ける狙いがあるようです。
今回、建築基準法の歴史も含め見ていきましたが、法律の条文だと難しく感じてしまいますが、2025年に向けて、平屋建て以外は確認申請時に構造の検討をした計算書が必要になるということで、高さの緩和もあり、2階建ての仕様規定も残りますが、許容応力度計算のニーズが高まることも予想されます。
あと3年と言わず、早めに理解して準備しておくことをお勧めします。

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