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第七回 かし保険躯体検査前後の工事の注意点・Ⅲ(耐力壁前編 筋かいと筋かい接合金物)

第七回 かし保険躯体検査前後の工事の注意点・Ⅲ(耐力壁前編 筋かいと筋かい接合金物)


かし保険躯体検査時 前後の工事の注意点、
今回は耐力壁のチェックポイント前編として、筋かいと筋かい接合金物について確認していきましょう。

耐力壁のチェックポイント

耐力壁とは

建物は鉛直方向の縦の力に対しては柱で受けることができますが、地震や風などの横からの力には抵抗できず倒れてしまいます。
耐力壁とは主体構造の一つとして、主に建物の地震や風圧などの水平力に抵抗させる目的でつくられた壁のことです。木造軸組工法では、耐力壁としてはまず「筋かい」挙げられますが、それ以外にも構造用合板・パーティクルボードなどの面材を使って作る「面材耐力壁」があり、これらを総称して耐力壁と呼んでいます。
鉄筋コンクリート造ではコンクリートの壁を耐力壁としたり、鉄骨造でも筋かい(鉄骨ブレース等)を使用し耐力壁を設置する場合があります。
特に地震に対しての耐性を強化した壁別名、耐震壁耐震ブレースなどということもあります。
耐力壁は構造上重要であるため、他の間仕切壁とは区別され撤去できない壁です。今後のライフスタイルの変化に伴い、先々のリフォームを見据えた計画が必要とされます。

筋かいについて

「筋かい」とは柱と柱の間に斜めに取り付けた材のことです。ちょうどつっかえ棒のような原理で、地震や台風のときに生じる建物が倒れようとする力に抵抗しています。
筋かいはその部材の大きさによって主に2種類の大きさがあります。組み方は片方向だけの片筋かい、たすき状にかけるたすき掛けの2つあり、組み合わせによって4種類の強さ(倍率)を持つ耐力壁をつくることできます。

筋かいを使った耐力壁

片筋かいの寸法と取付

  • 引張力を負担する筋かい
    → 厚さ15mm以上で幅90mm以上の木材又は径9㎜以上の鉄筋を使用
  • 圧縮力を負担する筋かい
    → 厚さ30mm以上で幅90mm以上の木材を使用

水平荷重による柱の引き抜きと片筋かいの関係

筋かいが柱脚にとりつく引張筋かいと、柱頭にとりつく圧縮筋かいでは、圧縮筋かいの方が強度が必要になります。
ただし、水平力は実際には一方向だけから掛かるわけではないので、引張力のみ負担する厚さ 15mm 以上で幅 90mm 以上の木材又は径 9 ㎜以上の鉄筋の引張筋かいは一般的には使われません。筋かいは左右対称に配置して、どの方向から力が加わっても抵抗できるようにすることが大切です。
左右対称に配置できない場合は「たすき掛け筋かい」を取り入れるのもよいでしょう。
全体的なバランスを確認し、適切な配置が行われているか確認をしてください。

筋かいの形状と壁倍率の関係

『壁倍率(かべばいりつ)』とは、耐力壁の強さを数値で表したものです。
基準としては前述の「15×90㎜の引張筋かい」を1として、木材の厚みごとに、『壁倍率2倍』のように示されます。例えば「たすき掛け」の筋かいの入った壁は、片筋交いの2倍の壁倍率ということになります。
また、筋かいと構造用合板等の「面材耐力壁」を併用した場合は、壁倍率を合計することができますが、壁倍率の上限は5倍までとされています。
これは壁倍率を局所的に高くしても、その部分の壁のみが大きい水平力を負担することになり柱や梁等の接合部に強い負担がかかってしまうからです。

筋かいのチェックポイント【1】
筋かいは必ず柱に接合されており
適切な壁倍率を持つ耐力壁がバランスよく配置されているか

筋かいの欠き込みについて

筋かいは、断面を欠き込むと、引張力や圧縮力を受けた時にその部分が壊れやすくなるため原則として欠き込みしてはいけません。
筋かいが間柱等と交差する場合には間柱を欠き取り、筋かいを通すようにします。

また、90×90㎜の「たすき掛け筋かい」等で柱寸法間に収まらない場合は、必要な補強を行うことで、一部欠き込みをしても問題ないとされています。
筋かいの欠き込みについては、躯体検査の確認項目にあたりますのでしっかりと確認をしていきましょう。

出典:【フラット35】対応『木造住宅工事仕様書』住宅金融支援機構

筋かいのチェックポイント【2】
筋かいは原則として欠き込んではいけない
柱寸法間に収まらない90×90㎜のたすき掛け筋交い等はやむを得ない場合のみ、適切な補強を行って欠き込む

筋かい接合金物

筋かい接合金物とは、筋かいの端部に取付ける筋かいと柱や横架材を接合する金物です。
筋かいが期待される耐力を発揮するためには、接合金物の選択が重要なポイントとなります。
筋かい接合金物を選ぶ際は、壁倍率の必要係数に合わせて建設省告示1460号告示で示されたものから選択します。

それぞれの内容については財団法人 日本住宅・木材技術センターによる『平成12年建設省告示第1460号に対応した Zマーク表示金物と同等認定金物・性能認定金物』を参考にしてください。

筋かい接合金物の種類と用途、メリット・デメリット等

筋かい接合金物は大きく3種類あり、必要な壁倍率を満たす金物を使って施工します。
なお、基礎配筋時に土台の中心にアンカーボルトが通るようにしていると、筋かいを入れるときにアンカーボルトと干渉してしまうこともあります。基礎配筋時に必ず施工位置を確認してください。
さらに、筋かい接合金物は引き寄せ金物ではないので、柱脚・柱頭に筋かいが取り付く箇所は、N値計算に基づいてプレート金物、羽子板ボルト、ホールダウン用金物など適切な耐力を持つ金物で補強を行いましょう。

引き寄せ金物等についてはこちらをご確認ください。

筋かいと筋かい接合金物の接合状況について

筋かいは、柱との接合状況に不具合(隙間・キズ・割れ等)箇所がないか等を確認します。
筋かい接合金物は、設計図書に基づき、壁倍率に合わせた金物が選択されているか、製造メーカーの施工基準に準じた指定の方法で正しく金物(品番・ビス本数・設置向き等)が施工されているかを同時に確認しましょう。

検査項目:「筋かい・筋かい接合金物の設置状況」で不適合となる施工状況

筋かい接合金物施工のチェックポイント

  • 筋かい接合金物は、壁倍率に合わせた金物を選んで指定の方法で施工する
  • 設計時点で、ホールダウン用金物やアンカーボルトとの干渉に配慮が必要

さて今回は、かし保険躯体検査前後の工事の注意点・Ⅲ(耐力壁前編 筋かいと筋かい接合金物)について、確認してきました。躯体検査ではこの後もさらに重要な箇所の確認が続きます。引き続きしっかりと確認していきましょう。

では今回のまとめです。

次回は耐力壁の後編として面材耐力壁や釘、壁の配置バランスなどについて説明します。

どうぞお楽しみに。

2023年12月19日
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