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建設業法改正 全面施行に向けて
ー 押さえるべき3つの改正ポイントと5つの実務対応 ー

建設業法改正 全面施行に向けてー 押さえるべき3つの改正ポイントと5つの実務対応 ー

建設業界では、担い手不足・長時間労働・価格競争の激化など、持続性を揺るがす課題が山積してきました。こうした状況を踏まえ、2025年12月12日、改正建設業法がいよいよ 全面施行されます。
今回の法改正は「元請 → 下請」だけでなく、業界全体に影響し、住宅会社・工事業者すべてに大きな実務変更をもたらす内容です。
今回の記事では “特に住宅事業者が押さえるべき”3つの改正ポイントを整理します。

今回の制度の概要

改正建設業法のスケジュール 
処遇改善
2024年9月~12月

■建設業者に労働者の処遇確保を努力義務化したうえで、国が取り組みの状況を調査・公表
■中央建設業審議会で「労務費の基準」を作成・勧告

2025年12月

■著しく低い労務費等で見積を依頼した発注者は、国土交通大臣が勧告・公表
■著しく低い労務費等で見積を提出した受注者は指導・監督
■総価での原価割れ契約を受注者にも禁止

資材高騰による労務費へのしわ寄せ防止
2024年12月

■資材高騰に伴う請負代金等の「変更方法」を契約書の法定記載事項として明確化
■受注者から注文者に対して、関連する情報(「おそれ情報」)を必要な情報として通知する義務
■契約前の通知をした受注者は、注文者に請負代金等の変更を協議できる

働き方改革と生産性の向上
2024年12月
【生産性向上】

■ICTを活用した現場管理の効率化
■現場技術者の専任義務の合理化

2025年12月
【働き方改革】

■工期ダンピングの対策強化

― 改正建設業法の「3つの禁止」が実務をどう変えるのか ―

① 著しく低い労務費等を前提とした見積依頼・見積提示の禁止

これまで、資材価格の上昇や人件費の高騰があっても、実態に合わない“安い見積”が現場に流通していました。改正後は以下が明確に禁止されます。

・労務費・材料費を適切に積算しない見積依頼
・内訳を明示しない「一式見積」への依存
・不当に低い労務費での見積提示

元請 → 下請だけでなく
下請 → 下請、施主 → 元請 など すべての階層で適正価格が求められます。

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内訳書の整備と“適正価格の説明力”が必須へ。

② 原価を下回る受発注(=原価割れ契約)の禁止

「利益がほぼ出ない」「人件費に回らない」という“安値受注”の構造を断ち切るため、受注者側にも原価割れ契約の禁止が適用 されます。

・施工原価を割った契約は違法
・“取れればいい”式の安値応札ができなくなる
・適正利益を確保した見積が必要

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利益を確保できない金額で請けること自体がリスクに。

③ 工期ダンピング(異常に短い工期)の禁止

長時間労働や施工不良の原因となる「過密な工期指定」が禁止されます。
今回の改正の特徴は、発注者だけでなく“受注者も”非現実的な工期を受け入れてはならないこと。

・元請の指示が短すぎる場合は協議が必須
・過密工程をそのまま飲み込むと法的リスク
・国交省が“工期の基準”を策定予定

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工期調整の記録や根拠提示が“会社を守る”武器になる。

住宅事業者が今すぐ着手すべき5つの実務対応

① 見積体系の刷新(労務費・材料費を明確化)
「外注一式」ではなく、職種ごとの労務費・材料費を明確化。

② 原価割れチェックシートの導入
利益率の基準値(例:粗利25〜30%)を設定し、逸脱時は社内アラート。

③ 工期の妥当性チェック
標準工期表を社内で作成し、“過密工程”を契約前に調整。

④ 契約書テンプレートの改訂
・工期調整条項
・物価変動条項
・労務費・材料費の内訳開示
これらを反映。

⑤ 施主向け説明資料の整備
「なぜこの価格なのか」「なぜこの工期なのか」を説明できる体制が信頼につながる。

まとめ

今回の法改正は、単なる規制強化ではなく、“安さ競争からの脱却”と“適正施工の時代” を業界全体に強制的に促すターニングポイントです。

工期・見積・利益の透明性を高める会社が、信用を獲得し、実際に工事を行う職人や施主から選ばれ会社になるのではないのでしょうか。

今回の全面施行は、住宅事業者にとって “経営基盤をあらためて整える絶好のタイミング” といえます。

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